これから雪山登山を始めようと思っている人や思いがけず雪山登山を始めてみることになった方向けに登山ガイドとしてお伝えしたいと思います。
結論から先に書かせていただくと総額を見誤らないでください。おそらく想像より安く行くことができます。
初期投資としては要らない装備もあるため、必要なものを必要なタイミングで適切に購入してください。
基本的な雪山登山装備
最初に必要な本当の装備
コバ付きの雪山で使えそうな登山靴 | 35,000円〜80,000円 |
12本爪アイゼン (英・仏:クランポン) | 18,000円〜28,000円 |
ストック | 15,000円 スノーバスケットが付けば夏と兼用でOK |
歩行中も着れる防寒着 | 15,000円〜40,000円 |
休憩時用の防寒着 | 5,000円〜50,000円 |
大きめのテムレス手袋 | 1,500円 |
小計 | 89,500円〜 ※ストック不要の場合は74,500円〜 |
以上、これだけになります。つまりはこれを買えば良いです!
あとは夏山と同じようにエマージェンシーセットやレインウェア、ヘッドライトなど必要な装備を持っていくようにしましょう。
ここから少し詳細を書かせていただきます。
雪山向け登山靴
雪山を登るための登山靴にも4種類ほどあります。
今回は幅広く雪山登山に使うことができる4シーズン向け登山靴のライトアルパインブーツと中綿の入ったアルパインブーツで考えていただきたいと思います。
ライトアルパインブーツ
夏山で縦走登山などのためにライトアルパインブーツをお持ちの方もいらっしゃいますよね。
またはこれから本格的な夏山登山も見据えて登山靴を購入したいという方もいらっしゃるかと思います。
そういう方にはかかと部分にコバ(出っ張り)のあるライトアルパインブーツも検討の余地があります。
ただし高山での使用や長時間の雪山での活動は危険を伴う場合がありますのでご注意ください。
ライトアルパインブーツの予算は40,000円前後
アルパインブーツ
雪山登山靴専用の靴といえるのがアルパインブーツです。
多くのアルパインブーツで中綿が防寒の役割を担っております。
ソール部分はアルパインブーツより硬く、ゴワッと感は否めません。
履き慣れてくるまで少し時間がかかりそうです。
寒がりな方にはアルパインブーツをご提案させていただきます。
アルパインブーツの予算は60,000円前後
12本爪アイゼン
雪山登山に慣れてきた方向けに10本爪アイゼン、たまにネットで売っている14本爪アイゼンなどがありますが、最初は黙って12本爪アイゼンで間違いはないでしょう。
さらに強いて言うなればアルミ製の軽量なものは避けてください。
そして登山靴にフィットするものを選ぶようにしてください。(上記記事ではトランゴアルプエボにマッチするアイゼンをご提案させていただいています。)
予算は25,000円前後。
ストック(トレッキングポール)
バランスを取るためにあると良いです。
また踏み抜いた際に自身の身体を持ち上げる際に支えとなります。
99%必要なものとお考えください。
夏山で使っているストックにスノーバスケットを取り付けられればそれで大丈夫。
安心して雪山に持参するようにしてください。
予算は15,000円前後。
すでにお持ちの場合は新たに購入する必要はありません。
防寒着
歩行中も着れる防寒着
歩行中も着用できるフリース、ソフトシェルをまず推します。
体内から出た熱を上手に外に排出してくれるものを選ぶようにしましょう。
また耐風性能に優れたものなども購入の決め手になります。
予算は20,000円前後。
予算幅が広いですがお金をかけて良いポイントだと考えています。
30,000円〜40,000円の物まで視野に入れて購入をご検討ください。
ちなみにオススメはフルマークスさんで取り扱っているHOUDINIブランドのパワーライトHoudiが最高に良いです!お客様に貸し出しをしており皆さまご納得いただいて購入しているので良い物かと思います。
休憩時用の防寒着
休憩時に立ち止まるだけで一気に寒くなります。
こういったときはダウンジャケットなどが有用です。
ユニクロ社の販売しているウルトラライトダウンも良いと思います。
また高密度で圧縮率の高いダウンジャケットなども暖かく、パッキングもコンパクトになるためイチオシです。
予算は5,000円〜。
大きめのテムレス手袋
テムレスという手袋をご存知でしょうか。
ショーワグローブ社が青と黒の2色展開で販売している作業向けの手袋です。
雪山登山には防寒テムレスの大きめが最適です。
普段使っている登山用の手袋をベースにして重ねて防寒テムレスを装着するようにしてください。
予算は1,500円。
手袋に関しては節約志向前提でご提案させていただいております。
登山用品店で別のオーバー手袋などの購入も可。
意外と不要な装備たち
ピッケルやハードシェル、ビーコンは初期の段階では意外と不要な装備です。
雪山登山は行く頻度によって異なりますが、少なくとも最初の数回の雪山登山はピッケルやハードシェルを必要としない傾斜角がそんなに厳しく無い山、ビーコンを必要としない雪崩が起きる可能性が低い地形の山に行くことになります。
アイゼンを装着したアイゼン歩行にも慣れ、寒さにも慣れた頃に少しずつハードな雪山にチャレンジしていくことになるかと思います。場合によっては1年目はそういった山とは無縁の場合も。
積雪があった翌日も朝一番でない限り人気のある山ではラッセルを誰かがしてくれており、トレースのある状態で歩くことができます。つまりスノーシューもワカンも不要。
−10度を下回る極寒の日には雪山には行かない、山行時間は6時間程度、人気がなくなったら戻るなどルールを決めておけば最低限の装備で済むようになるかと思います。
総額10万円で行ける雪山登山
コバ付きの雪山で使えそうな登山靴 | 35,000円〜80,000円 |
12本爪アイゼン (英・仏:クランポン) | 18,000円〜28,000円 |
ストック | 15,000円 スノーバスケットが付けば夏と兼用でOK |
歩行中も着れる防寒着 | 15,000円〜40,000円 |
休憩時用の防寒着 | 5,000円〜50,000円 |
大きめのテムレス手袋 | 1,500円 |
小計 | 89,500円〜 ※ストック不要の場合は74,500円〜 |
ざっと見繕っても10万円ちょっとになりました。
ストック、フリース、ウルトラライトダウンを持っている場合は6万円代。
ライトアルパインブーツ、ストック、フリースを持っている場合は3万円代。
登山初心者でも最低限の装備をすでに持ち合わせていれば12万〜15万円で雪山登山を始めることはできるかと思います。
雪山登山には時に危険が潜んでいる
雪山は時に危険な一面を見せます。
その時に適切な知識と装備を持って入山している必要があります。
数年前に登った残雪期の北アルプス唐松岳。
今年ガイド登山で登った際にはホワイトアウトに見舞われました。無事帰ることができましたが、(仕事中にホワイトアウトはなるべく避けたい事態ではありますが)ガイド登山中であったこともあり登山口までガイドすることができました。下山後は握手で無事帰還できたことを喜び合ったのを昨日のことのように覚えています。
これは決して他人事ではなく、雪山登山を始めるあなた自身に降りかかる心配事の一つとなります。何かあった際のセルフレスキューや登山計画の出し方や救助方法。事前情報の調べ方を確認しておくようにしましょう。
雪山机上講習のご案内
私が主催する雪山登山の机上講習会を開催します。
机上講習日程
第1回机上講習@神奈川
場所:参加者のみに公開
時間:14:00〜15:30
参加費:2,500円
第2回
11月20日(水)@都内
場所:参加者のみに公開(カフェにて開催予定です。)
時間:20:30〜22:00
参加費:2,500円(別途お茶代などの飲食費)
第3回
11月30日(土)
机上?講習@晴れた場合は首都圏近郊の山(雨の場合は都心)
場所:参加者のみに公開
時間:日中
参加費:3,000円
(登山ガイドMouuuu.comホームページでの参加申込となります。)
2019/11/11、10:00現在、Mouuuu.comホームページは通常表示されています。
雪山登山ガイドのご案内はこちら
編集後記
何かあった時の備えにアレコレ買って、持って行ってしまうお気持ちわかります。
ただし無用な荷物は買うのも持参するのも出来る限り避けたい。最低限の装備に留めお財布にも優しい雪山登山のご提案となっていれば私たち編集部としても喜ばしい限りです。